
リューカン(Rjukan)は、GAUSTATOPPENという山の麓にあるノルウェーテレマークの町。深い谷底に作られた工業都市だ。3,500人ほどの住民が生活しているリューカンでは、9月から3月までの半年間、太陽の光は山に遮られて町まで届かない。薄暗さと寒さに耐えながら、住民たちは町の暮らしを営んでいた。
太陽光を町の広場へ届ける巨大な三枚の鏡!谷底の町ノルウェー リューカン

町の始まりはおよそ100年前。リューカンのそばにある落差104メートルの滝からは、水力発電によって電力を得ることができたため、実業家サム・エイドの手によって近くに工場が作られた。やがてリューカンは工業都市となり、人々が生活をするようになった。

水と電気の恩恵を受けることができても、一年の内の長い間、太陽の恩恵は受けることができなかった。町が作られた当初から、太陽光を反射させる案はあったが、技術的に実現が難しかった。代わりに住人たちは、1928年に設置されたゴンドラに乗って山を登り、太陽の光を浴びにでかけた。
# 一年間に何千人もの人を山頂へと運ぶゴンドラ / Krossobanen
「Solspeil」と呼ばれる3枚の巨大な鏡が設置されたのは、2013年のこと。長らく放置されていたアイディアだったが、町の芸術家であったマーティン・アンデルセンが、リューカンへ光を届けるプロジェクトに再び乗り出した。

太陽光を町へ反射させる設備を作るためには膨大な資金が必要になる。マーティンは市庁舎へ頼み込んだ。 公共投資と民間スポンサーの力を借りて約85万1千ドル(およそ一億円)をかけてプロジェクトを成功させることができた。その支援の多くは、ノルスク・ハイドロ社が提供した。リューカンを創設する元となった実業家サム・エイドが設立した会社である。

1枚あたり51平方メートルという巨大な鏡は、太陽の動きに追従するようにコンピューターで制御されており、10秒ごとに動作する。約600平方メートルの面積にもなる光をリューカンの市場広場へ照らすことができる。

太陽光の到来に歓喜する住民たち。人々の心まで明るくしてくれる偉大な太陽の恵み。暗い谷底の町に明かりが灯ったお話。

