
今回は、おなじみウォルト・ディズニーの長編アニメーション映画作品のアニメ制作現場のお話だよ。『不思議の国のアリス』はこうして生まれた!
最近では映像の全てがコンピューターグラフィックス(フル3DCG)によって制作されるケースが多くなってきたディズニーアニメ映画作品。3DCG作品による興行収入の実績や、コンピューターを土台とした映像制作技術の進歩とその手法の変化などの影響を受けて、現在のディズニーは伝統的な手描きアニメーションから事実上撤退しているような状況だ。

しかしもちろん昔のディズニーアニメ映画作品の映像はアニメーター達の手によって一枚一枚丁寧に描かれていた。
映画のフィルム撮影は1秒間に24コマ(24fps)である。つまりわずか1秒間のアニメーションのために24枚もの絵を描いたわけだ。絵を描く枚数が多ければ多いほど労力とコストは大きくなるが、その代わり滑らかで豊かな表現力が生まれる。これはフルアニメーションの特徴である。
当時ディズニーで働いていたアニメーター達は、週にわずか23~24秒のアニメーションを作ることができた。
『不思議の国のアリス』の主人公アリスの声優、実写モデルを担当した少女キャサリン・ボーモント (Kathryn Beaumont)

1938年生まれ、ロンドン出身のキャサリン・ボーモント(Kathryn Beaumont) は、10歳の頃にディズニー社の創設者ウォルト・ディズニーによって、1951年に公開されたアニメーション映画『不思議の国のアリス』の主人公(ヒロイン)であるアリスの声優に抜擢された。
キャサリンは後に『ピーター・パン』のウェンディ役の声優も担当し、1998年には栄誉あるディズニー・レジェンドを授与されることとなる。

彼女のルックスにも感銘を受けていたウォルト・ディズニーは、アニメーターのための実写モデルとしてキャサリンを起用した。
古典的なディズニーの劇場版長編アニメーションの制作では、『ロトスコープ』という実写映像から役者の演技や動きをトレースして作画を行う手法が主に用いられていた。アニメーター達は、現実のキャサリンの動きからアニメの中のアリスの動きを繊細に描きおこす。アリスの衣装を着て演技をするキャサリンは、まさしくアリスそのものなのだ。








これらの古い写真は、ディズニーの素晴らしき古典的な長編アニメーション映画作品の制作が、いかに多大な努力の上に成り立っていて大変なものであったかを示す。そして制作者達が作品にかけた夢や愛、情熱の強さを感じさせてくれる。
# 左:キャサリン・ボーモント と 右:ウォルト・ディズニー