「オランダ島のバラード」と名づけられたこのクレイアニメは、アニメーションをはじめ、ドキュメンタリー、視覚効果、彫刻、モザイク、コミュニティベースやパブリックアートなど、幅広いメディアで活動するアニメーターのリン・トムリンソン (Lynn・Tomlinson) の映像作品。
リン・トムリンソンは、ストップアニメーション技法を用いて、立体感のある粘土を使って描かれた一つ一つのフレームを撮影(コマ撮り)し、撮影されたシーンを繋ぎ合わせてアニメーションを制作していく。まるで油絵が動いているようにも見える。粘土を使用したストップアニメーションは、一般的にクレイ・アニメーション(クレイアニメ)と呼ばれる。
アメリカのメリーランド州、チェサピーク湾に実在したオランダ島のクレイ・アニメ「The Ballad of Holland Island House」
「The Ballad of Holland Island House」の全篇をご覧いただく前に、「オランダ島」という島の話を少ししよう。
皆さんはオランダ島なるものをご存知だろうか?アメリカのメリーランド州に位置するチェサピーク湾。その湾に浮かぶ島がかつて存在した。
1850年に漁業や農業家族のコミュニティが生まれ、1910年にはチェサピーク湾で最大の有人島の一つとなって、70の家庭と約360人の住民が住んでいた。しかし、風と潮の侵食によって島は徐々に滅び始め、島の住人は本土への移住を余儀なくされた。
ちなみにオランダ島 ( Holland Island ) とは、1600年代にアメリカ大陸へとやってきた初期の開拓者、ダニエル・ホランド (Daniel・Holland)の名前に由来している。国名のオランダは「Nederland」と呼ばれるが、「Holland」も俗称においてオランダという意味になる。
財団によって島の保護を試みたが、1888年に建てれらたオランダ島の最後の家は、2010年の10月、ついに崩壊し、海へと沈んでしまったのだ。
そんなオランダ島の沈む家、悲しい歴史を描いたのが、今回紹介する粘土を用いて繊細に制作されたクレイアニメ「The Ballad of Holland Island House」だ。
本当に素晴らしい作品!僕は最初、沈んだオランダ島のエピソードを知らずにアニメーションを見たのだが、この島の事を知ってから、このアニメを更に好きで素晴らしいと感じるようになった。
まるで油絵が動いているような質感は、粘土によって絵が描かれているからであろうか、改めて映像を見返しても、このクレイアニメを制作するのにどれだけ膨大な作業が必要だったかと思ってしまう。
そして使用されている音楽も素晴らしい。 Anna &Elizabeth (アンナ&エリザベス) というハモりによって美しいメロディを織り成す音楽ユニットだ。気になる人は是非チェックしてみてくれ。
リン・トムリンソン (Lynn・Tomlinson) :
www.lynntomilinson.com
Anna &Elizabeth (アンナ&エリザベス) :
annaandelizabeth.com